こんばんは。
先日、とても貴重な体験をしました。
私の住んでいる町にある小さなローカル空港には、これまた小さいのですが航空博物館があります。(入場料は$5)
その小さい博物館に、なんと零式艦上戦闘機(零戦です)がやってくる というイベントがありました。
それは行かねば! と言う事で、行ってきました。
博物館、と言ってもどちらかというと殆ど野外展示ばかりなのですが、最初に出迎えてくれたのはSTVOL機*1として、とても有名な ハリアーでした。
着艦時に空母の上をフワフワと浮いている映像を見た事がある という人も多いでしょう。
映画にも出演していますね。
このノズルでフワフワするんですね。
室内展示もあり、そこには懐かしいセイバーが展示されていました。
かなりキューキューに色々詰め込まれているので、全体の写真が撮り難いのです。
同じ室内に、F-5 フリーダム・ファイターも展示してあり、これはコクピットに座れるようになっていました。
勿論、座りました。
恐ろしく狭かったです。
座って大喜びしていると、スタッフの方がやってきて、コクピット内の仕組みを色々と説明してくれました。
基本的な操縦の仕方も教えてもらったので、私、多分飛ばせます。
この博物館、野外展示は他にもあるのですが、展示場所が空港内に点在していて、この日は他の場所には行きませんでした。
が、空港脇の道路に面して展示している場所もあり、その道路からはF-14 トムキャットを何時でも見る事が出来ます。
この日のイベントは大戦時の戦闘機である、日本の零式とアメリカのヘルキャットがやってくるという事で、ハリアーの隣にはヘルキャットが翼を畳んだ状態で居ました。
一目見ての第一印象は「でかっ!!」でした。
思ったよりもかなり大きかったです。
そして、その隣には零式の二二型が、、、
私は初めて零式の実物を見たのですが、第一印象は
「なんて綺麗な飛行機」
でした。
私も雑食系モデラーの端くれなので、写真や映像では良く見ていますし、手付かずのプラモデル在庫の中には零式五二型とかもあったりしますから、勿論どんな形をしているかは知っていました。
でも、間近で見る零式は、月並みなのですが、本当に綺麗で美しかったです。
マジで、見とれてしまいました。
この綺麗な飛行機を作るのに携わった人達は、どれ程誇らしく自分達の仕事の結果を愛でたのだろう と思わずには居られません。
これは戦闘機なので、この飛行機の性能を上げる ということは、パイロットを生還させる ということと平行して、敵機を落とす という事になりますから、そう思う事に不快感を覚える方もいらっしゃるでしょう。
が、私も ものづくりを生業としているのですが、自分が仕上げた仕事を見る時、それが使われる事や、受け取った人の事を思う事は当然として、それとは別に、一つの自分が作った物 として、出荷するまでの短い間 それを愛でてやります。
全ての もの は、それを生み出した人からは愛されて欲しいと思いますし、この飛行機を見たときに、その後ろに居る、これ程の仕事を世に残した職人達がどんな事を思い送り出したのか、色々と考えます。
道具は使う人が居なければ、そこにあるだけでなにもしません。
この後、彼のレクチャーを受けました。
何となく写真から分ると思いますが、回りに見学者は殆ど居ません。
事前に大々的な告知もされていなかった為か、結局総観客数はそんなに多くはありませんでした。
思う存分かぶり付けたので(周りには遮る物は何もありません)、下回りやら、色んなディティールやら、色々と写真を撮る事が出来ました。
もしプラモデルを製作中だったなら、具体的に 此処どうなってるの? という場所もピンポイントで撮影できて、物凄い資料を作れたと思いますが、現在は宇宙海賊船を製作中なので、いつの日か、、、の為に無作為に資料写真を撮影しました。
(ただ、この機体は綺麗にレストアされてしまっているので、当時のまま というわけでは無いです。)
この日はもう一機特別展示がある と予告されていました。
私も大好きなマスタング(車じゃないです、P-51の方です)なのですが、見当たりません。
スタッフに、P-51も来るって見たんだけど? と聴いてみると、天候が悪化していて遅れているけど、今こっちに向かっている という事でした。
それから暫くすると、来ました!!
P-51 マスタング 登場。
油断して着陸を見逃してしまいました。
ビッカビカ、めちゃくちゃ綺麗です。
映り込みが凄い。
この後、プログラム(一応あった)に沿って、室内に入り 零戦とヘルキャットの開発、実戦での使用などを、当時の戦況と絡めてのレクチャーがありました。
皆さん、真剣に話を聴かれていました。
零戦の開発ストーリーから始まり、形式番号の意味や、エンジン、フレーム等の特徴等々、かなり興味深いレクチャーで、実戦に投入された当時、どれだけの高性能を誇っていたか という話も詳しくされていました。
が、その後アメリカ軍がヘルキャットを投入して、その形勢が逆転、加えて人(パイロット)も物資も不足していた日本。
最終的にはヘルキャット1機に対して、零戦19機が落とされるという比率にまでなったそうです。(これはレクチャーでの説明にあったものです)
物資が有り余るアメリカ製のヘルキャットは機体を大きくし、装甲板もシッカリさせて、重くなった分は大きいエンジンを積んで、圧倒的な戦闘力を誇った、というのに対し、兎に角運動性能をあげる為に、可能な限り軽量化された零戦は、装甲板が殆ど無かった という話の時は、会場が静かになってしまいました。
たとえ当時の敵国であったとしても、その切迫した状況を感じていたのでしょうか。
こう言った話をアメリカで、アメリカ人の中で聴く と言うことも貴重な体験だったと思います。
室内でのレクチャーの後は、実際に機体を前にして、具体的な説明を聴くレクチャーがあり、武装の事や、翼の展開の仕方等の説明がありました。
そして、その後、本日のメインイベントです。
地元の博物館に零式艦上戦闘機がやってくる、と書きましたが、この零式とヘルキャットは実際にここまで飛んできています(!)。
来るとき飛んできたので、勿論帰るときも飛んで帰ります。
レクチャーも終わり、最後に帰る前に2機が低空でランデブー飛行を見せてくれる と言うのが、今日のメインイベントなんです。
パイロットの二人が荷物を持って機体に向いますが、ヘルキャットのパイロットは小さめのスーツケースをコロコロと引っ張っています。
対して零式戦闘機のパイロットは小さなバッグを持っているだけです。
一体何処にスーツケースなんて積むの?と思っていると、翼に付いているハッチを開けて、悠々と詰め込んでいます。
武装を外しているので、そこに結構な収納スペースがあるようです。
さすがアメリカン。
そして霧雨が降る中、ゆっくりと牽引されていく零。
暫くクランキングした後、エンジンがかかるのですが、物凄くいい音でした。(ちょっとビックリした)
かかると同時に、コォォォッ という吸気音が凄く聞こえて、飛行機の音 というよりもチューンされたキャブ車みたいに感じます。
この後、離陸した2機は見守る観客の前を2回低空飛行して帰路に着きました。
2回もチャンスがあったので、普通なら飛行中の写真や動画を撮ったりするところだと思うのですが、カメラ越しじゃ無く、肉眼で見たかったので、途中で撮影を止めてしまいました。
見ている私達の前を並んで飛行したあと、そのまま仲良く(そう見えた)帰路に着いた2機をみて、やっぱりそれを作った人たちの事を思わずには居られませんでした。
自分が仕上げた仕事をいつかどこかで誰かが見て、その仕事からそれを成し遂げた人を想う、自分もそんな仕事が出来るんだろうか、、、
いろいろな事を考えさせられた、とても深いイベントでした。
*1:以前はハリアーといえばVTOL(ヴィトール、垂直離着陸機) と思っていたのですが、ハリアーの様に離陸は滑走路を使い、着陸にエンジン推力を使い垂直着陸するものはSTVOLというそうです。知りませんでした